こんにちは、八王子市・日野市・世田谷区で安心のご葬儀・家族葬のお手伝いをする葬儀社、都典礼(みやこてんれい)です。
今日もご葬儀に関する疑問、悩みの解消に役立つ情報をお伝えします。
喪主としてご葬儀を執り行うことになった時、ご葬儀費用の支払いに頭を悩ませる方もいると思います。ご葬儀は結婚式などと違い、突然訪れることが多くあり、ご葬儀費用はけっして安いものではないです。そのためお金のやりくりに困ることもあるでしょう。
そんな時、故人の残した預貯金から費用を支払いたいと考える方も多くみえます。
この記事では、ご葬儀費用を故人の口座から支払うにあたっての方法や注意点について解説します。
ご葬儀費用の捻出方法
近年では、ご葬儀に対する価値観の変化や新型コロナウィルス感染症の影響などにより家族葬の形でのご葬儀が一般葬を上回るようになっています。全国平均で約200万円弱といわれているご葬儀費用ですが、規模の小さい家族葬でも、80万〜120万円ほどの費用が必要となります。
ご葬儀費用の負担は、大きく分けて以下のパターンがあります。
喪主が負担する
ご葬儀の手配から寺院への連絡まで、ご葬儀全体を取り仕切る喪主がご葬儀費用を負担するのが一般的です。
参列者からの香典は喪主が受け取るのが一般的なので、香典をご葬儀費用にあてることができます。
親族で負担する
喪主1人で負担するのが難しい場合、兄弟や姉妹など相続人となる親族で分担してご葬儀費用を支払うこともあります。
負担の割合は年齢や収入を考慮して決めるのが良いでしょう。
故人の預貯金から支払う
親、特に世帯主であることが多い父親が亡くなった時には、故人の預貯金からご葬儀費用を捻出するケースも比較的多くあります。
スムーズに支払いを済ませるには、故人と生前のうちに話しあったうえで、生前にご葬儀費用分だけ引き出しておくのが良いでしょう。
故人の口座はどうなる?
亡くなった方が名義人となっている口座について、どのように対処すれば良いか疑問に思う人も多いと思います。
仮にそのまま放置したとしても法的な罰則はありませんが、一定の期間が経過した口座は休眠口座扱いとなり、手続きを行わないと預貯金の引き出しはできなくなります。
金融機関により凍結される
金融機関が口座の名義人が亡くなったことを知ると、その口座は凍結されます。
凍結とは、預貯金の引き出し、預け入れができなくなるだけでなく、公共料金などの自動引き落としや振込、振替もできなくなります。
金融機関が名義人の死亡を知るのは、以下のような理由によります。
・親族、相続人からの死亡連絡
・残高証明書の取得申請
・被相続人の口座に関する問い合わせ
・新聞などのお悔やみ欄
役所に死亡届を提出したら口座が凍結されると思っている人もいるようです。しかし、役所から金融機関に連絡が行くことはありません。したがって、口座凍結のタイミングは上記のようになります。また、金融機関どうしで連絡が回ることもありませんので、金融機関によって凍結のタイミングが異なる場合もあります。
口座の凍結を解除するには
金融機関が亡くなった方の口座を凍結するのは、相続トラブルを避けるためです。
キャッシュカードと暗証番号さえ分かれば、誰かが勝手に引き出すことができます。それは相続のトラブルに繋がりかねないため、名義人の死亡を把握した時点で直ちに凍結します。
凍結を解除するには、相続に関する協議が完了する必要があります。金融機関に遺言書または遺産分割協議書のコピーと戸籍謄本、印鑑証明などの必要書類を揃えて提出することで口座凍結が解除されます。ただし、解除の手続きには数週間から1ヶ月ほどかかります。
凍結された口座からお金を引き出す方法
遺産分割が完了するまで口座の凍結が解除されないとなると、ご葬儀費用などの早急な出費に対応できなかったり、それまで頼りにしていた生活費も引き出せずに生活に困るという事態が発生していました。
そこで2019年7月に民法が改正され、凍結中の口座であっても預貯金を引き出すことができる「預貯金の仮払い制度」がスタートしました。
預貯金の仮払い制度とは
預貯金の仮払い制度とは、相続人であれば口座凍結中であっても他の相続人の同意を得ることなく、一定の金額まで故人の預貯金を引き出すことができる制度です。
一定の金額とは、故人の預貯金の残高に対して、
①150万円
②預貯金額×法定相続分×1/3
①と②を比べて、金額の低い方が適用となります。「低い方」ですので、間違えないよう注意しましょう。
実際に例をあげて計算してみましょう。
「故人の預金がA銀行に1,200万円あり、相続人は妻と子が2人の計3人」とします。
妻の場合、法定相続分は1/2になりますので、②を計算すると、
1,200万円×1/2×1/3=200万円
となり、①の150万円の方が低くなるため、仮払いで引き出せるのは150万円が上限となります。
子の場合、同じく②を計算すると、1人あたりの法定相続分は1/4になりますので、
1,200万円×1/4×1/3=100万円
となり、②の100万円の方が低くなるため、仮払いで引き出せるのは100万円が上限となります。
なお、この制度は金融機関ごとに適用されますので、A銀行の他にB銀行、C銀行に預金があれば、それぞれ同じように計算して仮払いを受けることができます。
仮払いに必要な書類
仮払いに必要な書類は以下になります。金融機関によって異なることもありますので事前に確認するようにしましょう。
・故人の出生から死亡までの戸籍・除籍謄本
・仮払い請求人の戸籍謄本
・仮払い請求人の印鑑証明書
・金融機関の申請書
預貯金の仮払い制度の注意点
預貯金の仮払い制度を利用する前に、以下の注意点を抑えておきましょう。
相続放棄できなくなる可能性がある
預貯金の仮払い制度を利用すると、基本的には「単純承認」が成立します。単純承認とは資産の他に負債も相続することを意味します。
仮払いで引き出したお金を、相続税控除の対象となるご葬儀費用や故人の負債返済のために使ったのであれば単純承認は認められません。しかし、生活費などに使った場合は単純承認が成立します。そのため相続放棄を考えている場合は注意が必要です。
他の相続人とトラブルになることも
ご葬儀費用の支払いのために仮払い制度を利用したとしても、他の相続人に事前連絡していないとトラブルにつながることが考えられます。
「ご葬儀費用以外に使ったのではないか」と疑いをかけられるのを避けるために、ご葬儀費用の金額を証明できる明細や領収書は必ず保管しておきましょう。
まとめ
故人の預貯金をご葬儀費用にあてることは可能です。
気をつけたいのは、口座から引き出すタイミングで、一番良いのは生前に故人の同意のもとであらかじめ引き出しておくことです。
亡くなったことを金融機関が把握し、口座を凍結した後であっても仮払い制度を利用することで口座から引き出すことは可能ですが、他の相続人とのトラブルや相続放棄ができなくなる可能性があることを考慮したうえで利用するようにしましょう。
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