今回の記事では、天台宗のご葬儀について解説していきます。
まず始めに天台宗の特徴をまとめておきます。
- 【宗祖】伝教大師 最澄(でんぎょうだいし さいちょう)
- 【本山】比叡山 延暦寺(ひえいざん えんりゃくじ)
- 【経典】法華経(ほけきょう)全ての人が成仏できる
- 【本尊】決まっていない
- 【位牌】決まっていないため、梵字(本尊を表す字)もそれぞれ
- 【焼香回数】決まっていない(1〜3回)
- 【数珠】天台宗専用がある(平たい玉が連なっているのですぐわかる)
それでは天台宗の
- 起源
- 特徴
- ご葬儀の意味
を知っていただき、その後にご葬儀の流れとお作法を解説します。
こんにちは、八王子市・日野市・世田谷区で安心のご葬儀・家族葬のお手伝いをする葬儀社、都典礼(みやこてんれい)です。
今日もご葬儀に関する疑問、悩みの解消に役立つ情報をお伝えします。
天台宗の起源
天台宗は、中国の天台大師 智顗(てんだいだいし ちぎ)(538〜597)が開創したもので、『法華経』をよりどころとしました。
日本天台宗の設立は伝教大師 最澄(でんぎょうだいし さいちょう)(767〜822)です。中国で天台教学を伝授して帰国しました。
- 【円】広く完全な教え、天台宗では『法華経』と捉える
- 【密】信者だけの非公開の修行
- 【禅】禅宗の略、精神統一のための座禅
- 【戒】いましめ、仏教では内面的な道徳
の四宗を総合する天台法華経を日本で開創しました。(806年)
平安仏教を代表した宗派の1つです。
天台宗は総合仏教といわれている
日本天台宗には
- 【顕教】公に説かれた教えのこと
- 【密教】信者の間で共有する教えのこと
の両面がありますが、その後『真言宗』の影響も受けて密教化が進みました。(真言宗の『東密』に対し、天台宗は『台密』と呼ばれます)天台宗は、日本仏教の母体として鎌倉仏教へも大きな影響を与えています。
鎌倉仏教は、それぞれ密教であったり、禅であったりと云わば単科仏教であったのに対し、最澄を開祖とする天台宗は、前述のように四宗融合の総合仏教的な存在といえます。本山は比叡山 延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ)です。
戦国時代に焼き討ちにあったというイメージが強いかもしれません。こちらは世界遺産にも登録されています。
さまざまな宗派の融合する天台宗ですので、
- 釈迦如来(しゃかにょらい)
- 阿弥陀如来(あみだにょらい)
- 薬師如来(やくしにょらい)
- 大日如来(だいにちにょらい)
どのご本尊でも大丈夫です。
天台宗のご葬儀の意味
天台宗のご葬儀の意味について解説します。
顕教法要の
- 法華殲法(ほっけせんぽう)法華経を読んで煩悩を薄くし、罪悪を消滅させる
- 例時作法(れいじさほう)阿弥陀経を読んで往生へ導く
密教法要の
- 光明供(こうみょうく)阿弥陀如来を迎えて故人を引導して仏にする
3種の儀礼を営んでいきます。
天台宗では、顕教と密教の一致を説いています。
- 顕教とは、仏法を理解しやすいように言葉と文字を使って説くこと
- 密教は、仏と自己が一体であることを念じて仏の境地に達しようとする秘法
供養をする
- 遺族
- 縁のある人々
- 供養される故人
それぞれが一体となり、共に仏の道に成っていくことが天台宗のご葬儀の本質になります。
天台宗 ご葬儀の流れ
天台宗についての知識をもとに、
- ご臨終と通夜
- ご葬儀
について解説していきます。
ご臨終と通夜
ご臨終した後は、できるだけ早く枕経のお勤めをします。
これを『臨終の誦経(ずきょう)』と言います。通夜は例時作法(れいじさほう)『阿弥陀経(あみだきょう)』を読みます。また、通夜か入棺(棺の中に個人が入る)のどちらかで『授戒式(じゅかいしき)』という儀式をします。
授戒式は、天台宗では基本となる大事な儀式です。
- 剃髪式(ていはつしき)
- 授与文(じゅよもん)
- 授円頓戒(じゅえんどんかい)
- 位牌開眼式(いはいかいげんしき)
剃髪式は、カミソリを頭に当てて行う出家の儀式です。(実際に頭を丸めることはありません)
授与文は、授ける旨の文を読むこと。授円頓戒は、法号・戒名(仏弟子の名前)を授かり、戒を守ることを仏前に誓います。(天台の授戒とも言います)
位牌開眼式は、位牌に魂を入れる儀式になります。
ご葬儀の進行
葬儀式の流れは大きく分けると、
- 葬式作法
- 引導作法
になります。
※実際にこの通り行われることは少なく、寺院により違いますが、『一般的な光明供の作法』と思ってください。(省略されることもある作法には※印をつけています)
葬式作法
- 【入式場】導師の入場
- 【列讃(れっさん)※】仏の臨終を讃える声明を唱える
- 【導師登盤】導師以外は着席
- 【着座讃(ちゃくざさん)※】導師着座の前にこの儀式に祈念を込める声明を唱える
- 【法則(ほっそく)】この葬送の目的(共に仏の道に成る)と述べる
- 【光明供修法(こうみょうくしゅほう)】阿弥陀如来の導きのもと、故人を引導する
- 【九条錫杖(くじょうしゃくじょう)※】ほかに僧侶がいた場合、仏へ誓いを声明しながら錫杖を振る(錫杖とは僧侶の音のでる杖)
- 【隋方回向(ずいほうえこう)】仏に「何とぞよろしく」と今一度お願いする
- 【導師降盤】導師が椅子から降りる
引導作法
- 【列讃(れっさん)※】葬式作法と同じ(その後、着席)
- 【鎖龕・起龕(さがん・きがん)】死者を悟りに導く準備の儀式
- 【奠湯・奠茶(てんとう・てんちゃ)】これから死者が悟りの世界に入るという儀式。茶湯器(ちゃとうき)を取って供え、はなむけの言葉を送る
- 【歎徳(たんどく)】導師が死者の生前の業績や功徳を讃える文を読む
- 【引導・下炬(いんどう・あこ)】(下炬は火を下ろすという意味)松明で梵字と円を描いて下炬の文を送る
- 【弔電・弔辞(ちょうでん・ちょうじ)】
- 【法施(ほっせ)】経文を回向する※このときにお経が始まったら遺族・会葬者の焼香が始まります
- 【念仏・光明真言(ねんぶつ・こうみょうしんごん)】大日如来の力で浄土に生まれ変わらせる
- 【総回向(そうえこう)】それぞれが一体となり、共に仏の道に成っていくことを回向(ここで儀式終了)
- 【導師退出】
- 【出棺】
ご葬儀での焼香作法と念珠について
仏教の宗派は色々ありますが、天台宗でも同じく大事なことは、故人を大事に見送る気持ちです。
なかでも質問の多い『焼香作法』と『念珠』について解説いたします。
焼香作法
焼香回数について、特に決まりはありません。(1〜3回が適当)
天台宗では、故人の安らかな成仏を願う気持ちが何より大切だと考えているからです。
- ご本尊に一礼
- お香を3本指でつまんで
- 額に頂いて
- 香炉へ落とす
- 念珠を両手に掛けて合掌
※最近では、焼香の際に過剰な所作が多いです。
故人への気持ちが一番大事なので、親族席へは軽い会釈で結構です。
ご親族も会葬者への立礼はしないで、軽く会釈を返す程度でよいでしょう。
念珠について
天台宗のお念珠は、ほかとは違う特徴があります。
信徒なら、ぜひ天台宗の念珠を準備しておきましょう。
- 男性なら【9寸サイズ】
- 女性なら【8寸サイズ】
があります。
一番の特徴は、玉が平たいこと(僧侶用は大きい平玉)です。そのため信徒だとすぐにわかります。
一般的に使用される天台宗のお数珠の形は、主玉108個からなる二重タイプです。(108は煩悩の数です)
- 主玉が108個
- 親玉が1個
- 天玉が4個
- 弟子玉が平玉20個、丸玉10個の合計30個
- 露玉が2個
- 梵天房が2個
親玉から8つ目と、23個目に天玉があります。
天台宗のお数珠は一つの大きな輪から梵天房が2本出ており、輪の部分を二重にして持つ独特な形になっています。
まとめ
仏教にはさまざまな宗派が存在します。
今回は天台宗に絞って解説しました。天台宗のご葬儀に参列する場合は、焼香作法と念珠に注意して参列しましょう。